市役所などの面接で地元愛を訴えると採用されやすい?(質問への回答)

 私の著書『スピード解説 文章理解』好評のせいか、2016年(平成28年)末より公務員志望者からの質問メールが増えている。正直なところ、メール・マナーを守らない人が多くて辟易しているのだが、これからも可能な限り丁寧に返答し続ける所存である(ただし、今後はメール・マナーが守られている人限定にする)。

 さて、このような質問が複数あったので、今後もあるやもしれず、ここでご回答申し上げる。
 いわく、地元愛を訴えれば市役所や県庁の面接を突破できると思うのだが、どうか。

 以下、回答はあくまで一般論である。ただし、面接対策の講師であると同時に、面接官の指導も担当する者という立場で申し上げる。

 面接や志望理由書で、たとえば

『公務員になりたいと思ったのは、自分が生まれ育った○○市に貢献出来る仕事に就きたいと思ったからです』

と申告すれば、ほぼ間違いなく、面接官はその言葉を信じない。なぜなら、そういう言葉を発する若者の本音を知っているからだ。

 面接官はこう思うだろう。

『その地元愛って、地元を客観視して得た愛ではなくて、単に個人的な感覚から生まれた愛だろう。要は、実家もあり昔からの友達もいるこの街から離れたくないだけだろう。住み慣れた街から離れたくないだけで、単によそにはよそだという理由だけで住みたくないだけだろう。地元に貢献したいんじゃなくて、地元が自分に貢献してほしいのだろう』

と。
 以前から私はこういうのを「消極的地元志向」と呼んでいる。
 すなわち、少し距離を置いてその街を俯瞰的に眺め、自分の生まれ育った街だということは一旦忘れて、そのうえで『この街が好きだ』と思う「積極的地元志向」ではないということだ。よそから来た人が『この街が好きだ』というのと同じレベルで語れる地元志向ではないということだ。

 もし、これが単に『面接官はその言葉を信じませんよ』というだけなら話はそんなに深刻ではないのだが、残念ながら話はそこで終わらない。面接官はほぼ間違いなくこういう言葉を発する志望者は「使えない」と判断する。すなわち、不採用になるということだ。
 
 これを読んで、『いや、私はそんな消極的地元志向ではなくて、本当に地元の良さ理解して地元を愛する、積極的地元志向なんだ』と言いたい人もいよう。
 そうならば、次のことは理解したほうがよい。
 すなわち、この発言だけでは多数派である「消極的地元志向」の人たちとの区別は、面接官には困難だということ。よって、『地元愛』『地元へ貢献したい』などという言葉を、意地でも避けたうえで、『地元愛』『地元へ貢献したい』という思いを訴えねばなるまい。

 すなわち、どれだけ現実的・具体的に地元を語れるか、それに対してどれだけ自分の能力・適性が備わっているか、これを訴えることに尽きる。

 そして多数派の方。
 誤解してほしくないのだが、この「消極的地元志向」を私は否定しているわけではない。私の個人的な好みはともかく、このような「消極的地元志向」は人としてごく自然な感情であろう。

 問題はあまりにも自然すぎるがゆえに、そこで完結してしまっていることだ。自然すぎるがゆえに、それ以上のものを求めない。すなわち、地元を客観視し、現実的・具体的に地元を語ろうとしない。だから、語る中身がない。だから『自分の生まれ育った町に貢献したい』といった感情論、抽象論で終わらせてしまう。
 そういう安易に発言できる言葉を真っ先に掲げて、志望動機を語る人だからこそ、「使えない人材」と判断される。何も見ていない・考えていない人と判断される。
 『自分の生まれ育った町に貢献したい』なんて発言を聞かされた側としては、

『あ~、そうかい。だったら、地元の何に貢献するんだよ。どうやって貢献するんだよ。そもそも貢献できる能力・適性があるのかよ』

という思いになってしまう。

 そう、この面接は職員の採用選考だ。市民・国民の税金を無駄にしない、職員としての能力・適性を有しているか。要は仕事ができる人かどうかが大事なのだ。

 正直なところ、地元愛なんてどうでもいい。なくてもいい。もちろん、あるに越したことはないが、それより職員としての適性・能力があるどうかだ。各官公庁はそれぞれに新しい人材に対して求めている力がある。それを君が有しているかどうかだ。
 それはいくら君が、相手への愛はだれにも負けない、心の底から相手のことを愛している、と告白しても、相手が異性に求めるものを君が有していなければ、その告白は失敗に終わるのと同じだ。

 よって、面接対策とは単に模擬面接(面接ごっこ)を繰り返すことではなく、相手が求める人材像へ、自分を変化・成長させていく鍛錬を指す。

・ 国税などを公務員試験予備校のスタッフに薦められたのだが・・・(質問への回答)

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