ネガティブ・リストの作成@講演録:進路と『孫子』(26)


 それではここで具体的に考えて見ましょう。自分という人間の過去からの自然な流れを汲み取りつつ、現在をどう変化・成長させていくべきか。そして、自分が戦うべき「戦場」、その先にある自分の進路を、自分がもつ心の主導権によって、どう選ぶべきなのか。すなわち、どうやって『彼』と『己』を知るべきか。
 当然の事ながら、そのためにはは情報を集めないといけません。ここで注意しなければならないのは、私たちは進路に関するすべての情報を知り得ないということです。あらかじめ取得すべき情報は絞らなければならない。
 ここで皆さんがよく犯す間違いを言います。それは自分の好き嫌いで、自分の関心のあるところに絞って情報を得ようとすることです。それでは、自分の視野は広がりません。自分の可能性を狭めてしまいます。情報の取得は今の『己』の感情とは無関係に集めないといけません。かといって何でもかんでも情報を得るわけには行かない。どうすればいいのでしょう。
 そこで有効なのは、ネガティブリストの作成です。すなわち、『いくらなんでもこの選択肢を選ぶことはできないよな』という進路のピックアップです。「やりたくないこと」のリストではありません。もう一度言いますが、人の心はすぐに変わりますから、「やりたくないこと」を挙げても有益な判断はできません。そうではなくて「やれないこと」です。
 自分の今まで生きてきた過去の歩み、流れから見て、そこから培われた能力から見て、これはできないだろうなぁということ。あるいは、自分の持つ特徴や生理的感覚から見て『これは無理』というもの。それらをピックアップしておいて、あらかじめ選択肢から明確に除去しておくのです。単純な話、身体が頑健でなければいくら憧れていても、体を張って人の命を守る職業は無理でしょう。血を見るのがどうしても苦手な人はいくら職業として有利でやりがいを感じそうでも、看護師は無理でしょう。そういうことです。
 残念ながら人は、プラスを見るのは不得意でもマイナスを見るのは得意です。ポジティブに考えるのは難しくてもネガティブには簡単に考えられます。多くの人が、他人を上手く褒めるのは苦手でも、ダメ出しはすぐにできる、そのことを見てもそれは明らかでしょう。ダメ出しは誰でもできる、素人でもできます。だったら、そういう人間の性質を利用するのです。ネガティブリストを作成することで、自分のやるべきことをピンポイントで示すのではなく、輪郭を示してやるべきことの範囲を画定するのです。ネガティブリストで「輪」を作れば、その「輪」の中に収まったものはすべて「やれる」ことです。
 こうして可能性の範囲を決めます。自分の可能性は広げるべきで、自分の好き嫌いの感情で可能性を狭めるのはもったいない事ですが、かといって可能性は無限には広がりません。大事なことは、可能性は無限にあるといった非現実だけど綺麗な言葉に縋るより、狭めず広げすぎずで、現実的な可能性を追い求めようということです。
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饗庭 悟 : AEBASATOL

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