ある野球青年のリベンジ@講演録:進路と『孫子』(8)

 1年目はやはりと言いますか、勉強不足で応募先すべての一次試験にて不合格です。彼はそれなりに真面目に勉強していたと思います。しかし、今までの人生で机の上の勉強をまともにしてこなかった人が、20代半ばになって急に大学受験よりハードな受験勉強をして、尚且つフルタイムのアルバイトしている。アルバイトが終わった後は疲れているでしょう。というわけで、今までまったく勉強経験がなく、アルバイトに時間を取られて勉強を多くの時間を避けず、尚且つ疲れていて心身の状態が万全でなく勉強する。これでは結果が出なくても当然でしょう。
 しかし、彼は諦めませんでした。このとき、彼の「やりたいこと」は市役所勤務だったのです。そして、心優しい彼は公務員になることで親を安心させて「やりたい」のです。また、今までの人生へのリベンジもあったでしょう。公務員になれば身分としては安泰ですし、世間でどんなにお役所仕事を揶揄されても、本音ベースでは何と言ったって憧れの人気職業ランキングナンバーワンの地方公務員です。市役所職員になることは十二分に彼の中で人生のリベンジになるでしょう。多くの人が欲している安定した生活、それを手に入れることで周囲を見返す、これが彼の「やりたいこと」、リベンジです。彼は自分の人生を取り戻したかったのです。
 先ほど彼のことを心優しいと言いましたが、これは嫌味ではありません。この1年目の試験に失敗した直後に私は彼と出会いましたが、彼の人格はいたって普通の好青年でした。普通と言うことは、取り立てて悪い奴でもなければ、取り立てて立派な人でもないということですが。
 それで、彼の勉強は2年目に入りました。やはり、これまでの受験勉強の経験不足、それを補うための勉強時間の確保ができないことがネックになりました。しかし、アルバイトを減らせば生活も苦しくなり、勉強のための様々な費用も捻出できなくなります。問題集も買えなくなるのです。それでその状態のまま、本番に臨み、結局すべての採用試験で不採用を食らうことになりました。
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饗庭 悟 : AEBASATOL

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