ある野球青年の誤解@講演録:進路と『孫子』(7)


 なんと、と言うには理由があります。ご存知でしょうか。公務員になるためには、大学受験よりもハードな筆記試験が課される一次試験を突破しないといけないことを。現在では、そういう一次試験を撤廃している官公庁も増えていますが、一般的に公務員になろうと思えば、このハードな一次試験を突破するための勉強に取り組まなければなりません。市役所の採用に応募する場合、多くは教養試験なるものが一次試験で課されます。たしかに、一般的に言って市役所の試験は国家公務員や都道府県よりは簡単と言われています。問題のレベルも高校の基本レベル。とは言え、その試験の中身たるや、高校での文系・理系すべての科目が1~5問ほど出題され、加えて数学をベースにした知能テストや、公務員になるために必要な憲法や行政法の問題も課されるのです。とにかく勉強しなければならない科目が受験よりもはるかに多いのです。市役所などの地方公務員は、学生の就きたい職業、そして保護者の『ウチの子にならせたい職業』のランキングでナンバーワンになるほどの人気職業。であるにもかかわらず、公務員志望者の中の多くが途中で挫折するのは、このハードな試験勉強がその理由です。
 これだけハードな試験が課されるせいでしょうか。それとも公務員に対する世間一般のイメージからでしょうか。公務員は、この話に出てくる彼のような「履歴書を汚した人物」でも比較的採用されやすい、いやどこの民間企業にも採用されないような人の最後の砦、最後に行き着くマトモな職場、あのハードな筆記試験さえ突破すれば採用される、そのような認識が結構世間にはあるようです。中退や転職といった何かを途中で辞めた経験を繰り返した人は、最終的に公務員を志望することがよくあります。しかし、この「履歴書を汚した人物」でも比較的採用されやすいというのは誤解、少なくともこれからの時代は誤解だと言えるのですが。
 とにかく、こういう誤解があってかどうか、夢破れた彼は市役所職員を目指して勉強し始めたのです。勉強から最も縁遠い彼が。それで、親からの経済的援助は先述のとおり受けられず、自身で生活を支えないといけませんから、1日8時間週5日というフルタイムワーカーと同じ労働時間のアルバイトをしながら、もちろん自腹を切って予備校に通い、勉強することになります。つまり、フリーターであり受験生です。きれいに表現すれば苦学生です。
 
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饗庭 悟 : AEBASATOL

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