20万円

公務員試験にかかるコスト
~お金編~



 2008年に近畿のある県庁に採用された男性の事例を紹介する。もちろん単なる一事例なので、そのつもりで読んでほしい
 彼はその当時、関西の難関私立大学社会学部の学生だった。彼は、経済的な問題ではなく、純粋に戦略として独学を選んだ。ただ、面接・討論・小論文は独学できないので、就活コンサルタントが指導するセミナーに9ヶ月ほど参加した(ちなみに、それは就活ワークショップとも饗庭とも無関係)。
 彼は、ある公務員試験の勉強の仕方マニュアルの本を買って、そこに書いてあった方法に愚直なまでに従い、勉強した。したがって、勉強の材料もマニュアルにあった推薦本をそのまま買った。幸いにも、その当時の資料が今手元にあるので紹介する。

 以下は、彼が2008年当時使った問題集・参考書の全てである。

専門<法律系>
『スーパートレーニングプラス憲法』(TAC出版) 1470円
『新スーパー過去問ゼミ2 憲法』(実務教育出版) 1890円
『法律入門 憲・民・刑 判例まんが本』(辰巳法律研究所) 1575円
『民法のまるごと講義生中継Ⅰ』(TAC出版) 1470円
『民法のまるごと講義生中継Ⅱ』(TAC出版) 1470円
『基礎からステップ 民法』(実務教育出版) 1470円
『行政法のまるごと講義生中継』(TAC出版) 1470円
『スーパートレーニングプラス行政法』(TAC出版) 1470円
『大卒公務員の過去問1問1答 刑法・商法・労働法』(三修社) 1365円

専門<行政系>
『行政5科目まるごとパスワード』(実務教育出版) 1260円
『新スーパー過去問ゼミ2 政治学』(実務教育出版) 1890円
『新スーパー過去問ゼミ2 行政学』(実務教育出版) 1890円
『20日で学ぶ国際関係の基礎』(実務教育出版) 1260円

専門<経済系>
『大卒公務員の過去問1問1答 経済原論・財政学』(三修社) 1365円
『らくらく マクロ経済学入門』(週刊住宅新聞社) 2310円
『らくらく ミクロ経済学入門』(週刊住宅新聞社) 2310円
『経済学入門塾<Ⅴ>計算マスター編』 2310円
『新スーパー過去問ゼミ2 経営学』(実務教育出版) 1890円

教養<知識系>
『初級スーパー過去問ゼミ 自然科学』(実務教育出版) 1365円
『パスラインシリーズ 自然科学』(時事通信社) 2000円
『パスラインシリーズ 人文科学』(時事通信社) 2000円
『MANGAゼミナール入試で点が取れる555 日本史B』 945円
『MANGAゼミナール入試で点が取れる555 世界史B』 945円
『光速マスター 人文科学』(実務教育出版) 1260円
『20日で学ぶ政治・経済の基礎』(実務教育出版) 1260円

教養<知能>
『カリスマ講師のマル秘授業公開 数的推理 判断推理』(洋泉社) 1575円
『畑中敦子の数的推理の大革命!』(LEC東京リーガルマインド) 1575円
『畑中敦子の判断推理の新兵器!』(LEC東京リーガルマインド) 1680円
『畑中敦子の天下無敵の数的処理!①』(LEC東京リーガルマインド) 1470円
『畑中敦子の天下無敵の数的処理!②』(LEC東京リーガルマインド) 1470円
『畑中敦子の資料解釈の最前線!』(LEC東京リーガルマインド) 1260円
『新スーパー過去問ゼミ3 文章理解・資料解釈』(実務教育出版) 1890円
『公務員試験マル秘裏技大全』(洋泉社) 1575円
『国家Ⅱ種・地方上級公務員 出たDATA過去問 文章理解』(七賢出版) 1575円

その他
『公務員 速攻の時事』(実務教育出版) 1050円
『公務員 速攻の時事 実戦トレーニング編』(実務教育出版) 945円
『過去問500 国家Ⅱ種専門試験』(実務教育出版) 2520円
『過去問500 国家Ⅱ種教養試験』(実務教育出版) 2520円
『過去問500 地方上級専門試験』(実務教育出版) 2520円
『過去問500 地方上級教養試験』(実務教育出版) 2520円
『受験ジャーナル特別企画 直前対策ブック』(実務教育出版) 1680円
『1週間で書ける!公務員合格作文』(三修社) 1365円
『論文試験頻出テーマのまとめ方』(実務教育出版) 1365円
『現職人事が書いた面接試験・官庁訪問の本』(実務教育出版) 1260円

以上


 誤解してほしくないのだが、これらは饗庭の推薦本リストではない。あくまで、これらを買って勉強し、その後県庁に採用された人がいた、というだけである。
 さて、このリストを紹介した理由は問題集の批評をするためではない。公務員試験にはどれだけのコスト=お金がかかるかを検証するためである。
 リストにある問題集などの総計は以下の通り。
専門試験用全18冊 計30135円
教養試験用全16冊 計23845円
その他全10冊 計17745円

総計 全44冊 71,725円

これに彼は人物テスト(2次試験以降の面接・討論・小論文)対策のセミナーに9ヶ月通っていて、その費用は計108,000円。

総合計 179,725円

これに何回かの模試代を加えれば

190,000円くらい


 ちなみに通信講座を申し込めば、大卒の国家・地方・市役所コース(論作文添削6回含む)で約80,000円(これは先の事例の問題集代とほぼ同じ)。同じようなコースで予備校に通えば300,000~400,000円くらい。ただ、通信にせよ予備校にせよ、そこで提供される問題だけでは練習不足だと気付いて、結果的に市販の問題集を買う人は多い。それには饗庭も賛成である。

 通信講座や予備校に通うと、もう問題集を買わなくてもいいと考えている人がいる。もちろん、そこで提供されるテキストを何周も行うことは大事だ。だが、学習内容を形を変えて繰り返すことも大事なのでないのか。これは、予備校などで与えられるテキストの質の問題ではない


 よく重要事項・基本事項を押さえていれば大丈夫という助言がなされるが、そもそも「重要」「基本」とは何か。何が重要かは無論教える側は分かっている。だが、教えられている側は、本当は分かっていないのではないか。『テキストに太字で書いてあるから』とか『講師が重要と言ったから』といった理由で、その項目が重要だと「知っている」だけで、本当は何がどう重要か「わかっていない」のではないか。だから、覚えられないのではないか。 (何かを学ぶとき、この「わかる」という感覚、自分の肌で感じる「実感」というものが大事なのだが、それは他人から話を聞いただけで身につくものではない。)
 教科の専門家ではない受験生側が自力で、その科目の重要科目・基本事項は何かを把握するのは困難に思える。
 一見。
 ところが本当は、素人でも何が基本でどう重要か、そして何を覚えるべきで、どうその知識を使うべきか、それらを自力で判断できるのだ。何も教わらなくても合格に必要な程度なら、ポイントを自力で把握できる。自力で把握したからスムーズに、しかも解答に使える形(これについては後述)で覚えられる。それは非常に単純な方法だ。すなわち

複数の問題集に取り組めばよい

いやいや、時間のない公務員試験受験生に「取り組む」は酷だろう。「取り組む」のは2冊くらいで、あとは「チラッと見る」だけでいい。ある項目について、5冊くらいテキストを見ると全てのテキストに載っている用語がある。4冊に載っている用語がある。3冊に、2冊に。1冊にしか乗っていない用語もある。もうおわかりであろう。多く載っていれば載っているほど重要事項である。重要なものは何度も言及される。至極、当然のことだ。
 私はこのことを何度も講義で繰り返し言ったし、著作でも書いた。が、ここでも改めて言っておく。重要とは何か。基本とは何か。

 基本とは、いついかなる場合でも繰り返される行為(言葉)、そのものを指す。(いつも同じだから、別の行為(言葉)をなす応用の時を知る。)

 どんな場面にも使われる言葉や方法が、基本であり重要なのである。どんな場面でも。そう、どんな場面でも使われているものを知るためには、多くの場面、つまり複数の問題集に当たらないといけないということだ。予備校で与えられているテキストが最高に良質のものでも、そこに拘るものは勝利から遠ざかる。考えてみたまえ。ある有名人を、なぜあなたは有名人だと認識するのかというと、様々な場面でその人の名を聞くからである。だから、その人の名も覚える。一箇所だけなら、その人の名は覚えるかもしれないが有名人だとは思わない。何かの売名行為くらいにしか思わないだろう。
 そして、あちこちで名を聞く有名人は、大抵その世界では「重要」人物である。


 コストの話でなぜこのような話をするのかと言うと、通信講座をとっていようが予備校に通っていようが、ある一つのものだけに拘泥することは危険だということを理解してほしいからだ。問題集であれ何であれ、複数のものに触れるというのは、かけるべき必要なコストなのだ。
 よく、一つの問題集・テキスを何周も、それこそ10周もやって、『もう問題も答えも完全に覚えてしまった』という人がいるが、当然本番で、そっくりそのまま同じ問題が出るわけがない。高校の定期テストではないのだから。そのテキストで学んだ内容を応用できるかどうか、別の問題(=別の形)で試されるのである。その力をつけるためには別の問題、つまり別の問題集に取り組み、別の形にあたる経験をしないといけない。一冊のテキストのみに集中するのは楽だが、それでは本番で使える知識にはならない。答えを覚えてしまったある一つの問題を丸暗記したところで、その知識は本番の「解答に使える形」にはなっていないのだ。(となると、複数の問題集に取り組むための時間が惜しくなる。記事『コスト~時間編~』の最後で書いたことが、ここで問題になってくる。)


 さぁ、話を戻そう。
 予備校などを利用している人はそこでのテキストが最初の1冊になるのは当然として、もう1冊、2冊のためにどれだけお金をかけているのか。何人かの予備校の生徒(合格者)に訊くと、大体30,000円から40,000円くらいは費やしたようだ。ここに直前講習やら面接個別対策などを加えるとなると、先ほど述べた予備校代からして、彼らの平均コストはやはり

40万円から50万円

といったところか。

 もちろん、公務員試験対策のためにかける金額の多寡が採用・不採用を分けるわけではない。問題はお金のかけ方だ。よくよく吟味せねばならないが、金額の目安はもっておいたほうがよいだろう。先ほどの県庁採用者は、個人的にはおおむね上手くお金をかけたと思う。金額も妥当だろう。10万はケチに過ぎる。が、50万はかけ過ぎか。もしあなたが先の事例に納得できるのなら

20万円

これを基準に考えたらどうだろう。

(了)
プロフィール

饗庭 悟 : AEBASATOL

Author:饗庭 悟 : AEBASATOL
自己紹介

☆お問い合わせは
aebasatol@yahoo.co.jp

カテゴリ