論点を創造する力@「就活ワークショップ」(個人宛文面)

 ”次の記事”からの続き。
 毎週私のもとで頑張っていたこの学生は当時、名門国立大学に通う公務員志望者でした。前回の「机」のことに引き続き、先日行われた討論演習の全体評価と自分への評価への追加質問がメールにて送信されました。

 以下の文面は、その回答メールの内容であります。プライバシー保護のため、一部削除・改変・伏字などを行っていたり、このブログ用に太字処理や段落がえ、文字の大きさの変更など施しておりますが、文面はその学生、個人宛に送ったほぼそのままです。そのつもりで読んでください。送信したのは数年前です。

 なお、この討論演習では毎回、自薦を含め、記名投票で、「採用者」を互選し合うということを討論後に行っていました。それを私が集計し、上位2名を「採用者」として発表しておりました。

  ○  ○  ○

件名「引き出し」

前回の「机」の続き。今回は××さんからのメールの以下の部分について。

『今回のグループワーク、饗庭さんは結構評価してくださっていましたが、自分の感覚としては、前回の行政の役割同様、議論がふわふわ進行してしまった気がします。外から見ていてもそんな感じはありましたか?
私自身の改善点も教えていだだきたいです。』

 私から見て『ふわふわ』は感じなかった。××さん個人が『ふわふわ』の状態となっていたということであろう。それが君に票が集まらなかった要因とも言える。このことを君の改善点を意識して漢文調で述べるなら、

不創自論
不従他理


となろうか。

 おそらく××さんは、『死刑制度、賛成か反対か』といった論点がハッキリしている、まさにdebateなら今以上に力を発揮するのであろう。論理の演算で白黒が確定するような問題なら。
 ××さんはレールを敷く技術もあるし、レールの上を疾走する能力もある。だが、「この街にレールを敷いて」といわれると「え?街のどこに?何を基準に?」となる。

 今、ビジネスや市役所の世界で求められるのは、街の現状に合わせて基準をつくれる人間だ。討論で言うなら、漠然としたテーマから、自ら論点を創造する、その力だ

 ところが、××さんの場合、そのような問題が出ると、自力で論点を創造しようとする前に、問題そのものに異議を唱えてしまう。問題がおかしいのじゃないの?とケチを先につけてしまう。これが2点目の、他者の理(ことわり)に無条件に従う姿勢の欠如だ。

 それがたとえ君にとって不条理に思えるものでも、社会人はそれに従わねばならない(その理由は別の話。ブログで少し書いたが)。ましてや、本当に不条理かどうか分からないことに関しては、とりあえず相手の言うことに従って、答え(正解ではないし存在しない)を創造しないといけない。自分の信念ではなく、他者の言に準じて答えを出す。私が常に言っている、まずは相手に合わせる、だ。

 前回の討論では結局、問題に疑念を抱き(その姿勢そのものは大切)、問題に合わせることが出来ず『ふわふわ』してしまったということだろう。というか、まだ君が以前言った『たった一つの正解を求める』という姿勢から抜け出せていないのかもしれない。討論でも、「予想される正解の存在」が見込めるテーマなら上手く議論にのれるが、そうでないときは、他者の言葉・意見の意味を問うことに終始してしまう。

 では、どうすればよいのか。まず、「予想される正解」に依拠する姿勢をあらためること。
 次に討論進行の基準、つまり論点をつくるために、常に自分のフィールドを意識し磨き上げること。いつも言っている「軸」「得意ネタ」だ。

 君はよく自分のことを『薄い』という(まぁ私も冗談で言うが)けれども、『○○を住みたい土地NO1にしたい』とか『とにかく○○に遊びに来て欲しい』とか、郷土愛は本物なのだから、何でも○○を軸に考えればよい。もちろん君が勉強し身に着けてきた△△学的思考でもよい。

 とにかく、自分の中にあるものに依拠して、そこに引っ張り込む姿勢だ。そこから論点は自ずと生まれる。討論の枠組みもそこから組み立てられる。そして、その引っ張り込むための自分のフィールド(=ネタ)を広くするのがこの演習だ。

 すなわち、自分の「引き出し」を多くすること。自分の机でも経験あるかもしれないが、いろいろと引き出しを引っ張り出してみると思わぬものが見つかる。「正解」を求めぬ心があれば、思わぬ「良い答え」が引っ張り出せたりするものだ。
 そのために自分の方へ引っ張り込む。引っ張り込む自分のフィールドをつくり、常に意識する。

 以上、どれだけ伝わっただろうか。また君の力に資するよう、何とか言わんとするところを表現してみる。この話は君の深い部分に抵触する話なので、私はもしかしたら的外れのことを言っているかもしれない。だが、私が何の的をめがけて言葉を投げているかは理解してくれよう。ここまで、読んでくれてありがとう。また会おう。

  ○  ○  ○

☆饗庭の面接本
『堂々面接回答 ザ・クール・アンサー』(新曜社)
全国の紀伊国屋書店・各大学の生協にて絶賛発売中!

(紀伊国屋書店以外の大型書店でも発売中)

「就活ワークショップ」案内
プロフィール

饗庭 悟 : AEBASATOL

Author:饗庭 悟 : AEBASATOL
自己紹介

☆お問い合わせは
aebasatol@yahoo.co.jp

カテゴリ