内定を得た学生のアドバイスはどれくらい有効か@「就活ワークショップ」

 就職活動中の学生を支援するサークルというものがあります。
 そのサークルは既に内定を得た先輩・同輩といった学生自身が運営をしています。さらにその背後に、そのサークルの卒業生で比較的若い社会人が支援するという体制をとっています。

 そういうサークルに加入する、またはそこまで行かなくても、内定を得た先輩・同輩にアドバイスを受けるということは、大学受験に置き換えれば、近所で名門大学に合格して評判のお兄ちゃんお姉ちゃんに、勉強を教えてもらうようなものです。

 当然のことながら、アドバイスをする「お兄ちゃん・お姉ちゃん」たちはプロではありません。現に彼・彼女らは無給でアドバイスを与えています。無給どころか、就活生のために模擬面接の会場を借りたり、カフェでコーヒーをご馳走してくれながらアドバイスをしてくれる、つまり自ら経費を負担しているのです。

 なぜ彼・彼女らは、そこまでしてくれるのでしょう。

 『自分の経験が後輩たちの役に立てば』という思いかもしれません。『自分がかつて何も知らなくて苦労したから、自分と同じ思いを皆にして欲しくない』という動機かもしれません。
 『この活動は人脈作り、将来のための先行投資』とその動機を言い切る若者がいれば、それは大したものでしょう。
 本音のレベルで『自分の成功体験を語って、後輩に崇め奉られるのは快感だから』という気持ちがあるのは、おそらく誰しも否定できないところではないでしょうか。

 いずれにせよ、アドバイスする側の動機が金銭を得ることでない以上、その動機はどうしても「自分の想い」を先行させたものになってしまいます。
 さらに金銭を得ないということは責任も発生しないということです。責任が無いとはどういうことか。それは、就活生がそのアドバイスを受けて活動した結果、上手くいかなかったとしても、アドバイスをする側は何らペナルティーを受けない、たとえば、賠償金を払う、自分がその地位を失う、将来の利益や仕事を失う、そういったことが無いということです。責任を持たないということは、精神的なことはともかく、社会的には何らの不利益も制裁も無いということです。

 よく心理学の観点からも、体験談を聞く危うさが指摘されます。誰かに成功体験を語りアドバイスを与える人は、無意識に自分の体験を美化したり、自分の持つ方法論を「一般化」する分析作業もせずに、『これが最も一般的な方法だ、最善の方法だ』と思い込んだりします。
 そして、そういう状態に陥った人は必ず口では『ひとそれぞれだけど、私はこう思う』と言いつつも、自分の助言に従わなかった人をバカだと思い、それでいてその従わなかった人が別のアドバイスを受けて上手くいくと言い訳をする、そういう傾向にあるようです。

 あなたが既に内定を獲得した先輩・同輩にアドバイスをもらうこと自体は、そんなに悪いことではないでしょう。ですが以下のことは心得ておいた方が良いかと思われます。すなわち、

 体験は真実であるが、真実のごく一部である
 
 責任無き発言は責任ある発言より軽い

 体験談は本人の誤解によって語られる

の3点です。

 就活生は被災者ではありません。よってボランティアしてまで救う対象ではないのですが、実際には無給でアドバイスしたがる人が沢山います。そういうアドバイスしたがる人たちのアドバイスを受ける時間を作れるのなら、話をしたら良いでしょう。
 しかし、あなたに時間の余裕が無いのなら、もっと将来の仕事について、引いては就活について、深く考えさせられる人の話を聞いてはいかがでしょう。実は、この記事の本当に言いたいことはこれです。

 すなわち、「仕事のリアル」を伝えてくれる社会人経験豊富な人、そんな人の仕事の話を聞くのは大変勉強になる、ということです。

 具体的には志望する業界や企業の人に接触して、お邪魔にならない程度で、仕事の現場にほんの少しでも触れさせてもらうことです。
 しかもこれは、インターンシップや説明会といった組織の側がお膳立てしたものではなく、あなたの意志で計画し、課題を設定し、接触したものでなければなりません

 一般的に社会は、社会を広く深く知ろうとする若者を歓迎します。様々な世代の人の多くの話に触れ、感じ、考える、そんな経験を豊かに持っている若者を求めています。自分の夢や希望という色眼鏡で世間を見るのではなく、「仕事のリアル」を少しでも覗こうとする若者を評価します。

 「仕事のリアル」を目の当たりにすべく、課題を持って行動し、そこで感じたこと考えたことをまとめていく。それこそが本当の意味での、自己分析、行動実績の蓄積、キャリアビジョンの構築、つまり真の就職活動、本当の意味での面接対策になるのではないでしょうか。


「自力で『仕事のリアル』を知る、そのことこそが自分を自分にする」


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