第一志望非在論(1)

 ここに一人の、未だ一度も女性と付き合ったことのない、妄想する男がいたとしよう。
 彼は思う。『やはり付き合うんだったらAさんがいいなぁ。彼女は本当に可愛いから。Bさんはそれほど可愛いとは思わないけど俺と相性は合うかも。Bさんが彼女というのも悪くないな。Cさんとは余り付き合う気がしないけど、Dさんよりはマシか。Dさんはダメ、論外。』
 この言葉が、この4人の女性から告白を受けたという事実による独白なら何も問題はない。
 だが、これは妄想だ。4人から告白を受けたという事実もなければ、自分から今4人の女性を誘ってみて、相手を振り向かせることに成功する保証もない。
 保証のないどころか、この彼はひょっとしたら彼女たちからすれば「論外の男」かもしれない。彼がダメだと思ったDさんからも『こちらこそ、あなたは願い下げ』と思われているかもしれない。
 彼は、彼女たちの心について何も知らない。彼女たちの誰を選ぶ権利も持っていない。
 それなのに、誰を彼女にするか妄想する彼は、滑稽な男と言えよう。

 だが、これを誰も笑えない。求職活動をする学生の多くが、この滑稽な妄想に取り付かれているからだ。
 君は一人の、未だ社会に出たことのない、妄想する学生である。そして、君は、相手の心(=組織側の採用基準)について何も知らない。未だ、組織のどれを選ぶ権利も持ってはいない。
 第一志望。これは企業から内定という『ウチに入社しないか』とお誘いを受けるまでは、ただの妄想である。しかも複数の企業からお誘いを受けるまでは妄想だ。1社だけなら君の志望とは無関係に、そこに入るしかない。
 君が『あまりそこで働く気はないけど一応スベリ止めみたいな感じで応募しとこう』と思っている組織から、君は「論外の人材」という判定を受けるかもしれない。求職活動に偏差値など存在しない以上、君がどんな組織からも「論外」と思われている可能性は否めないのだから、複数内定獲得の前に第一志望を思うのは滑稽ではないか。
 複数の組織から社会人として認められるまでは、君に何かを希望する資格はない。

ポリシー・フレーズ
選択の権利を得るまでは、順位をつける資格はない。

(2) ~君に内定を出すリスク
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饗庭 悟 : AEBASATOL

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