哲学を武器に論理的に「怒る」実例集217:草稿〔3〕

※草稿〔3〕は第16節より最終の第22節を経て「あとがき」まで


第16節  自分の言っていることが常に正しいと思っている者には怒っていいのだ

152 根拠の不備

「君の考えは間違っている。私の言うとおりにしたほうがいい」
「なぜ、私の考えが間違いだといえるのか」
「そんな考えでは上手くいかないのは目に見えているからだ」
「それは理由の説明になっていない。私の考えがなぜ間違いなのか、明確な根拠をもって示せなければ、『私の考えが間違い』というあなたの指摘が間違いで、よって私の考えが正しいことになる。ましてや、あなたの言うとおりにする理由はない」

※何かを誰かに主張する者が、その正しさを証明する責任をもつのは理の当然。何かを自分自身に主張するときも同様。ちなみに、この対話では最初の発言について、「君の考えは間違い」と「私の言うとおりにしたほうが良い」の2つの段階で言葉を検証すべき。前者が仮に正しくても、後者が正しいかどうかはまた別問題。


153 結果論の不毛 

「ほらみてみろよ、オレの言ったとおりになっただろう。だからやめとけって言ったんだよ。そんな失敗をして、オレの言うとおりにしなかったからだ」
「それは結果論だ。あなたの言うことより、私の判断のほうが上手くいく根拠が多かったからそうしたのだ。あくまで確率の問題だ。80%の成功確率でも5回に1回はハズレ。その1回が最初に来ただけだ」

※自分がかつて言ったことが現実になると、鬼の首を取ったような物言いをする人がいる。そういう人には、必然・蓋然・偶然という言葉の意味を教えるべきだ。


154 経験の過信

「私の言うとおりにしたほうがいい。この仕事を君よりも何倍もの年数を経験した私が言うんだから間違いない」
「経験に頼るのは単に考えるのが面倒なだけなのでは。その経験が今回の場合どんな風に当てはまるのか、それを考える時間がある以上、考えるべきだ」

※ただの勘ならあてにはならない。だが、「豊富な経験の裏打ちによる勘」なら従う価値がある。ただし、それは調べる・考える時間がない場合だ。経験は確信を生むが、正解を生むとは限らない。経験は返って、柔軟な発想を妨げる危険性がある。・根拠の不備


155 成功体験の束縛

「私は以前、ひとつの方法にかけて、それに集中したから上手くいきました。今度も、この一つの方法にかけてみたいと思います」
「以前に上手くいったのはたまたまの結果論であって、以前も今度も、一つの方法にかけて上手くいく確率は低い。以前上手くいったからというだけで、冷静な計算を忘れてはならない」

※最強の偏見は自分の成功体験である。「守株」の愚かさを誰しもしがちである。


156 助言者の責任

「就職浪人したって来年上手くいく保証なんてないだろう。内定出たところが一つあるんだから、そこに入社しろ。それがおまえのためだって。どうして私のいうことを聞いてくれないんだ。私の判断が信じられないのか。それとも、私のコンサルタントとしての力量を疑っているのか」
「先生の判断も力量も信じています。しかし、先生のアドバイスを生かすための能力が私にはないようなのです。そうなると、心のどこかで先生に責任転嫁してしまうかもしれませんから、ここは先生のアドバイスとは別に自分のなりの根拠で判断を下したいのです」

※「おまえのために言っているんだぞ」と言って助言を与える人は多い。その助言に盲目的にしたがった場合、上手くいけば助言者のおかげ、上手くいかなければ助言者の責任。その助言を意見の一つに留めて助言とは違った行動を選択した場合、上手くいけば自分自身のおかげ、上手くいかなければ自分自身の責任。助言者の責任を負わせないようにしたいという気持ちは助言者に伝えておくべきだ。


157 専門家の誤謬

「おまえの考えは間違ってる。これに関しては私のほうが専門だから、私の方が正しい」
「専門家がいつも正しいのなら専門家同士で意見が別れるはずがないじゃないか。それに知識がたくさんあることと物事の本質を見抜くこととは別だ。専門家はその分野の知識がたくさんあるというだけに過ぎない。むしろ、専門知識があることで視野の広がりを妨げられたり、本質を知ることがなかったりするじゃないか。その分野に近すぎて全体が見えなくなっているんだよ」

※たとえば、国際紛争とご近所での諍いが本質的には同じように、物事の本質は身近な事柄との共通点を見出せることが多い。自分の周囲を目を凝らして見ているのなら、専門知識がないことを恐れる必要はない。


158 原因の単純化

「この薬、飲んだほうが良いって。絶対に痩せるから」
「そんな押し売りをしないでくれ。痩せるのは食事や運動などの様々な要因が重なったからだ。この薬が絶対条件とは言えない」

※一つの出来事が生じるのには多くの原因が重なる必要がある。世間で起きる出来事の中で、一つの原因だけで事が起きることほど単純なものはほとんどない。また、ある一つの行動がある出来事を生じさせる原因で有り得たとしても、それが絶対条件ともいえない。


159 条件の相違

「オレはこの方法で上手く言いった。だから、オマエもやるべきだ」
「君の経験は貴重だが、安易に君の経験を私に当てはめるな。君と私とでは持っている条件が違うのだ。君の方法をどの程度取り入れるかは、私にも共通する条件がどれだけあるか次第だ。」

※「オマエも私と同じこの方法でやれば上手くいく」という物言いは、一聴すると助言に聞こえるが、その実は自慢話である。





第17節  自分には責任がないと思い込んでいる者には怒っていいのだ

160 じゃぁ、まず責任を問おう

「どうして私だけ言われなくちゃいけないの。みんなやってるでしょう」
「だったら、やっている人みんなに言うよ。まずは君からだ」

※一番最初に指摘された人は指摘された時点ではオンリーワン。


161 じゃぁ、自分に責任があると分かっているんだね

「みんなやってるじゃないか」
「それしか言えないということは、自分がやっていることが悪いことだと自覚しているのだな。他にやっている人がいるからといって、どうしてそれが悪いことではないと言えるのか」

※「みんな」とは誰かとか、「みんな」とは本当に全員かとか、なぜそれを君が知っているのかと、様々な返し方があるが、「自爆」を指摘するのが最も効果的。・根拠の不備


162 揚げ足取りの常套手段

「3つ入れておいてくれと言ったのに2つしか入っていないじゃないか」
「いや、確か2つと聞きましたが」
「いいや、私は3つと言った。2つとは言ってない。君は私がいまウソをついているとでも言いたいのか」
「それをおっしゃる前に、なぜ私の聞き間違いではと指摘ないのですか。どうして、わざわざ私の罪を重くしようとするのですか」

※3つと言ったか2つと言ったか、それが問題になっているのに「私をうそつき呼ばわりするのか」というふうに論点を別のところにズラシて非難してくる。こういうのを揚げ足取りと言う。揚げ足取りには軸足がどちらかをしっかり伝えるべきだ。


163 クレーマーの常套手段

「あなたのところの商品を使って、怪我をしたぞ。一体、どう責任とってくれるんだ」
「怪我をしたときの状況を教えてください。どのような使われ方をしましたか」
「おいおい、待てよ。まずは先に謝るのが筋だろう。それとも、怪我をしたのは私のせいだと言いたいのか」
「事実が明らかになるから責任の所在も明らかになるのです。誰のせいかを言う前に、事実をきちんと説明してください」

※多くの場合、責任の所在を明らかにするのには時間がかかる。責任を取らせることを急がせる者には何か別の意図がある。これも一種の揚げ足取りと言えよう。


164 君も責任を取るのだの覚悟

(あまり真剣味のない様子で)「申し訳ありません。今月の売り上げが目標に達しませんでした。本当にすみませんでした」
「もしかしたらアレを近々君に出してもらうことになるかもしれないから用意しておいてくれないか」
「アレ、って何ですか」
「分からないのか、辞表だよ。私もその覚悟なのだから、君も同罪だ。それがイヤなら、辞表の代わりに売り上げ改善策を用意するんだ」

※Do Or Die 、口先だけで謝罪する人間には生きるか死ぬかの覚悟を本気で迫らなければならない。


165 私も責任を取るのだの決意

「それで、これが上手くいかなかったら誰が責任を取るのだ」
「たとえば、もしあなたが責任を取ることになったら、どう責任をとりますか」
「これが上手くいかなくて大きな穴をあけたら、辞表ものだろうな」
「そんな責任は私にはとれませんので、あなたにお願いします」
「おい、待てよ、誰が俺一人で責任とると言った?」
「そもそもこの企画が成功するように話し合わなければいけないのに、失敗を前提としたお話はやめに願いたい。それとも失敗を望んでいるですか。責任はこの企画に関わった者全員が等分に負うべきものです」

※失敗した場合の回復策は講じるべきであろうが、誰かに責任を押し付ける議論は建設的ではない。責任とは本来重いもの。自分が軽々しく引き受けるものでもないし、ついでに論ずるようなことでもない。・ 自己への比喩、原点回帰


166 ちゃんとした質問をしたか

「近頃の学生の自己アピールは本当になってない。ほぼ全員、聞いていてウンザリするような内容だった」
「ほぼ全員が変な答えをしたということは、そもそも質問がなっていないからじゃないか。学生を責める前に、自分の質問の仕方をもう一度見直したらどうかね」

※インタビューであれ何であれ、上から目線で質問するとおかしな質問を発してしまう。その返答内容で、本来なら自分の質問が適切でなかったと気付いて目線を下げないといけない。回答の質よりまずは質問の質を自身に問う謙虚さは保つべきである。


167 ちゃんとした生き方をしたか

「2年前の貴様の言動のおかげで、味方したオレまで巻き添えを食った。アレから何をやっても上手くいかない。貴様がオレの人生を狂わせたんだ」
「今、人生が上手くいっていないことを、直接関係のない過去のせいにするな。過去のことを責めるより、今どうすべきなのかを考えよ。2年もの間、浮上のきっかけをつかめなかったのは君自身の責任だ」

※たとえ自分が過去に誰かを傷つけたとしても、そのこと以外の責任を感じる必要はない。今の人生の責任は生きている当人にある。




第18節  謝って済ませるんじゃなく学ぶべきなのだ

168 遅刻の理由なんて聞きたくない

「遅刻して申し訳ありません。ちゃんと時間を計算して来たんですけど、道路が予想以上に混んでまして」
「おい、遅刻したらどうせどんな言い訳をしたって許されるものではないんだ。どうせ言い訳するんなら、こちらが笑える言い訳を用意しろ」

※待たされた方は、どんなに正当な遅刻理由があろうとも腹立たしいものだ。「私を笑わせてみろ」というくらいの無茶ブリはあっていいだろう。


169 弁明なんて聞きたくない

「すいません、書類提出が遅れまして。他にもたくさん仕事を抱えていたものですから」
「君は遅れたことについて私に許しを請うているのかね。言い訳を言っても言わなくても、許されないことに変わりはない。ならば、謝罪に徹底しろ。そして、黙って次に成果を出せ」

※言い訳をするのは、宝くじを買うのと同じく、射幸心の表れと言えよう。


170 謝罪しながら努力をアピールするなよ

「私が未熟であったことは謝罪します。しかし、これでも一生懸命努力してきました。私が今までやってきたことそのものは間違っていないと思います」
「君は謝罪をしているのか、弁明をしているのか。結果が伴わなかったから謝罪をしているのだろう。君にプライドがあるなら尚更、今は謝罪に徹して、次回に結果が出るよう具体的な検証だけを述べるべきだ」

※自己愛が強く、「相手が自分をどう見ているか」以外は他人の心に無頓着で、自分が置かれている状況に勘違いをしてしまう、そういう人は言い訳が多い。


171 一番大事なことは何だ

「何度も同じミスを繰り返してスミマセン。本当に自分で自分が情けなくなります」
「君が自分自身をどう思うかは脇に置け。君は顧客に迷惑をかけた。そのことに気持ちを集中させろ。いいか、仕事においては自分の感情や価値観は忘れて、顧客の価値観を見定めるよう、注意深く見聞きするんだ」

※自分の信念や方法論を短い言葉でフレーズ化=ポリシーフレーズをもっておく。そして、それを繰り返し伝える。相手に伝わるブレない怒り方である。そうすれば、怒られた方は常に原点を確認できる。


172 君を守れないじゃないか

「スイマセン先輩、また納期遅れそうです」
「納期が守れなさそうと思ったときに、どうして私に相談してくれなかったのか。何か助ける手立てがあったはずだ。君の評価が下がらないよう、私は君を守る用意がある。しかし、君が積極的に動いてくれなければ、君を守ろうにも守れないではないか」

※本書の前書きで述べた「無私」で怒るとは、相手を守るための怒りということだ。


173 いつもの君らしくないじゃないか

「すいません。自信満々で引き受けましたのに失敗してしまいました」
「なぜ、いつもの君でいなかったのか。君が普段どおりなら上手くやれると思ったから、君にやってもらったのだ。私は君の失敗に怒っているのではない。慢心して我を忘れたから怒っているのだ」

※怒りながらも、『いつもの君を認めている』というメッセージを入れてさりげなく評価の高いことを示し、『いつもの君』でなかったことだけを責める。相手の心からの反省とこちらへの忠誠心の両方を引き出す効果的な怒り方である。


174 ミスは小さいうちに摘み取ることだ

「スイマセン、先方からクレームがありました報告をつい先延ばしにしてしまいまして。自分の力で何とかなると思いながら、つい2週間も放置してしまいました」
「よく覚えておくんだ。ミスしたことや面倒なことは下手に隠さず、スグに報告してチームでことを解決するように考えるべきだ。自分の力だけ処理しようとすると、さらに大きなミスを生む。遅刻を取り戻そうと焦って車を飛ばし、途中で人をはねるような真似をしてはならない」

※チームの誰かが自分の知らないところでミスをしていることほど怖いものはない。一つのミスは小さいうちに適切に処理しなければ、やがて膨れ上がっていく。そのことは周知徹底すべきであろう。


175 過剰な謝罪要求

「そんな謝罪の仕方じゃ不十分だ。もっと他にも謝り方があるだろう」
「私は誠意を尽し、罪に相当するだけの謝罪はした。これ以上の謝罪は断る。なぜなら、私の謝罪する気持ちに付け込んで、不当な要求をしてくる可能性が見えてきたからだ」

※しつこく謝罪を要求してくる者は、何か不穏当な企みを相手が抱いているか、もしくは、実のところ「もっと自分にかまって欲しい」という気持ちの変種にあたる依存症的精神をこちらへ向けているか。いずれにせよ、こちらの「悪かった」という気持ちは、相手の付け込む隙を生むので、適切な謝罪を即座に着実に行うべきであろう。


176 お客様が神様かどうかは状況次第

「おい、こっちは客だぞ。客の言うことには従えよ。じゃなきゃ謝れ」
「勘違いしないでください。お金を払う側が常に偉いわけではありません。売る側と買う側は対等です。私があなたには売らないと決めましたら、あなたはお客様ではなくなるのですから」

※売買する双方で格差がつくのは、希少性がどちらかにあるとき。



第19節  若い連中も中年層も困ったものだ

177 質問には答える意味のないものがある

「先生、英語ってどうやったら上手くなるんですかねぇ」
「その質問をしている時点で上手くならないことに気づけ。そんな漠然とした質問にマトモな回答が用意できるわけないだろう。『get to と can のニュアンスの違いはどのようなものですか』とか、もっと具体的に質問する癖をつけよ」

※目下のものからの質問は何でも答えなければカッコがつかないと思うべきでない。特に、このような不適切な質問に答える必要はない。自分に投げかけられた質問が、質問として正しいものかどうかを常に問う慎重さは保つべきである。


178 質問には答える価値のないものがある

「どうやったら売り上げ伸びるんですかね。営業のコツというものを教えてもらえませんか。」
「その質問、短く答えれば誤解を与えるし、マトモに答えれば一冊の本になる。質問が漠然としすぎる。たとえば、『クロージングのときには使わないようにしている言葉ってありますか』とか、もっと具体的に質問してくれ」

※質問を受けたとき、その答えを考える前に、答える価値のある質問かどうかを考える必要がある。質問する側が、あまり考えずに行った質問は、多くの場合答える価値のない質問である。


179 そもそも質問になってないものがある

「今の答えで当社への志望動機は理解できますが、他社も当然応募なさっていますよね。ということで、どこが第一番目の入社志望先ですか。ウチが第一志望ですか」
「はい、その通りです。御社が第一志望です」
「本当ですか~。この質問するとみんなそう言うんですけど」
「そのように疑われているということは、先ほどの質問は確認のための質問ではないということですよね。確認でもないのに回答が分かりきっている質問をしたということですよね。回答が分かりきっている質問は、確認質問を除いて、質問とは言えません。回答が分かりきっている質問をしておいて、その回答を疑うのは礼儀にかなっているとは言えません。もし、あなた様が私と同じ立場で同じ質問・同じ反応を受けたら、どう思いますか。」

※即座に明確な回答をするより、具体的で本質的な質問をする方が、より知性を要する。


180 安定が一番と思っている人

「とにかく安定した職業に就きたい。将来が不安なんですよ」
「安定した職業に就けたとしても、大病を患うかもしれない。それは心配だろう。たとえ健康だったとしても、そこの道で車にはねられて半身不随になるかもしれない。それは心配だろう。たとえ事故にあわなかったとしても、通り魔事件に巻き込まれて死ぬかもしれない。それは心配だろう。将来のことを心配するなら、今おこるかもしれない、それら全てのことを心配しろよ。いいか、不幸をもたらすものなんて、いくらでもあるのがこの世の中だ。その世の中を不安や心配といったマイナス目線で見れば、結局君が得られるものもマイナス寄りのものでしかなくなる。」

※安定は堕落をもたらす。


181 あまりにありふれた非難をする人

「近頃の若いヤツはなってないな」
「そちらさんも十分に若いですよ。もっと上の世代から見れば。そして、同じことを言われたのではないですか」

※若さとは相対的なもの。40代・50代の人も60代・70代から見れば若者。また、若さとは年齢の上下を意味するだけでなく、生きるスタイルをも意味する。その場合は褒め言葉となる。


182 誰だっていつまでも若々しくいたいはずだ

「いい年して何やってるの。年齢をわきまえたら」
「年齢を忘れるほど、若さが自分の中に満ち溢れているんだよ」

※年齢は生誕してから今日までの年数を表す以外に何らの定義をもたない。だが、人は年齢にそれ以外の意味を見出し、それを根拠に様々な評価を下してくる。しかしながら、年齢に年数以外の意味がない以上、年齢を根拠とした評価は無意味である。頭に雪が積もる齢になろうとも、人は果敢に冒険をし、情熱的に恋をし、新たに知識・技術を身に付ける。本当はやりきる気力と成し遂げる能力が問われるべきなのであって、年齢は問われることではない。歳を重ねての「若気の至り」こそ、歳相応の落ち着きよりも価値がある。誰しも若さを求めていることが、その価値の証である。


183 誰だっていつまでも勉強すべきなのだ

「アイツらにいくら言って聞かせても、まったく勉強しないんだ。オレが若かった頃はもう少し勉強したもんだが」
「そういう君の今はどうなんだ。君は今一生懸命に勉強しているのか。人がやらないことをとやかく言う前に、自分がやってみろ。貧しい人に金儲けの話を聞いても説得力がないのと同じで、今の君が勉強しなければ若い子達も勉強しない。昔は勉強してたかもしれんが、それは昔は大金持ちだったと言っているのと同じで、目に見える現在の行動によって自分が示さなければ、他人は動かない」

※我が振り見せて人の振りを直せ。


184 成功したらスグに他人への感謝の気持ちが薄くなる若者は多いね

(メールにて)「A社に採用が決まりました。ここまでいろいろとお世話になりました。なお、これから何かと忙しくなりますので、直接お礼には伺えませんが、また機会があればよろしくお願いします」
「君は非常に偏差値の高い国立大学に在籍しながら、本当に「情け」がない。『何としても先生に直接御礼を申し上げたいのですが、どうしても大学と入社先両方の抜き差しならぬスケジュールが立て続けにありまして、やむを得ず、まずはメールにて感謝の意を表す次第です。できるだけ早い日時に御礼にお伺いしますので、しばしの欠礼をどうかご容赦賜りたく存じます』くらいは言えないのだろうか。頭があるんだったら、もう少し言い方を考えろよ」

※感謝と謝罪は直接言うのが基本。言えない、言いたくない、そうならせめて文面で相手を気遣う。ましてや、心底謝意があるなら、言い方一つでそれが疑われてしまうことに注意すべき。本心が誠意であれ悪意であれ、モノは言い様。


185 本当に厳しく言ったら泣く若者は多いね

「もっと私を厳しく叱ってください」
「そんなことはできない。本当に厳しく叱ったら君は私を嫌うだろう。そんな危険は冒せない。君が言っているのは、君が耐えられる程度の少しの厳しさで叱って欲しいということだろうが、君の心が見えない以上、そんな微妙なさじ加減なんてできない。厳しく叱って欲しいというのは、君の都合であって私の都合ではない。」

※叱るときはこちらの都合で叱る。要求されるようなことではない。


186 そもそも見た目もちゃんとしろよ

「バカにするな。人を見た目で判断するな」
「だったら言葉と行動で、見た目以上の実力を示せ」

※見た目とのギャップを狙っている人もいる。


187 自分で怒りを止められない人

「この書類、ミスがあるじゃないか。前も同じようなミスしたよな。なんでいつもそうなんだよ。それに前から思ってたが、何だそのスーツは。ヨレヨレじゃないか。そんなもん着てちゃ、態度もピリッとしたもにならないよな。そうそう、オマエ態度悪くないか。そんな調子だから、またオレに叱られるんだよ。だから、オマエみたいなヤツは陰でコソコソをオレとかの悪口言うんだよ。言ってるんじゃないか。どうなんだ。それになぁ・・・」
「ちょっと待ってください。それらと今のお叱りとは関係ありません。あなたのお怒りをこちらがキチンと受け取るためにも、怒りをコントロールしてください。怒りの中にも、どこかに冷静さを保ってください。でなければ、私が悪いのに、そのおかげであなたまでもが理性を欠く人との評判を受けてしまいます」

※感情の浮き沈みが激しい人というのは、怒り出すと自分で怒りのネタをさらに生み出す。が、本当はどこかで誰かに感情の暴走を止めてもらったがっているものだ。その役を担わされた方は、たまったものではないが。



第20節  マナーに欠ける人には腹が立つのだ


188 君はそんなに忙しいのか

(スマホを見ながら自転車に乗るのが習慣になっている知人に対して)
「自分の頭の悪さを周囲に振りまきながら自転車に乗るな」

※自転車の運転に徹しきれない「集中力の欠如」、危険をリアルに感じ取れない「想像力の欠如」、時間配分ができない「思考力の欠如」。常に電気的刺激を浴びないと間が持たない脳を持つ人間が、ちょっとした凶器にまたがり、こちらの知らぬ間に背後から猛スピードで近寄ってくる。これほど恐ろしいことはない。


189 君にはお返しに臭い息でも吐きかけてやろうか

(自分が吐くタバコの煙に迷惑している他人に無頓着な喫煙者に対して)
「真っ当な喫煙者が持つべきものが2つある。携行灰皿とビニール袋。吸いがらと同じく煙もきちんと始末しろ」

※愛煙家が減少傾向にあるがゆえに、タバコの煙が余計に気になり出すこの皮肉。


190 もっとすごい音楽を聞かせてやろうか

「アイツ、音漏れがうるさいんだよ、電車の中で。マナーがなってないよな。注意しようか」
「彼に対する強制力を持たないのに、注意してやめさせようとするな。注意よりも行動だ。どのみち、あの手のタイプは言葉では理解できないのだ。むしろ、そのことを分かっていない君を注意するよ」

※スカチャカとイヤホンから大きな音漏れをさせている人のすぐ隣に行って、自分も同じく音漏れをさせるといい。彼に聞かせる音楽は、KING CRIMSON の "21st Century Schizoid Man" の1972年2月26日のライブヴァージョンが良かろう。 


191 そもそもマナーを教える講師も勘違いしてないか

「受け取った名刺をテーブルに置く場合は、右に置くんでしたっけ、左に置くんでしたっけ」
「そんなことはどうでもいい。右利きなら左に置くが、それは何かをメモしたりと右腕を動かす機会の方が多いから、名刺が見えなくなったり当たって落としてしまったりしないようにそうするのだ。が、右利きでも左腕を動かす機会が多かったり、書類などテーブルの上に置くものが多いのなら、時々の状況によって位置を決めればいい。要は、どこに置けば合理的かを考えろと言うことだ。形式的なマナーに拘る意味はないし、仮に拘るにしても、今言ったような合理的意味が分からなければマナーを知っていることにはならない」

※もし、そのマナーの形式に現実的意味がなければ、守る必要はない。一方で、形式的なマナーに拘って人を評価する者がいれば、それは放って置けばよい。


192 何か狙ってるんじゃないか

「久しぶり。もう何年ぶりになるかな。実は私、もうすぐ結婚します」
「こっちが連絡して欲しいときに音沙汰がなく、何年も連絡よこさないで、今になって連絡をよこすとはどういうことだ。君の都合のいいときだけ連絡をよこすのはやめてくれ」

※今まで連絡のなかった人から急に連絡があった場合、それは向こうにお祝いごとがあって「おめでとう」を言って貰いたいか(「じゃぁ何かお祝いをするよ」という言葉を引き出すためか)、逆に不幸なことがあって「昔はよかった」とノスタルジックに浸りたいか、何かの勧誘か。いずれにせよ、こちらに親しみの情を感じてのことではない(もしそうならとっくに連絡をよこしているはず)。


193 ウソがつけるほど頭がいいのか

「こういう場面ではウソついてもいいですよね」
「質問にならない質問をするな。ウソが良いか悪いかで言えば悪いに決まっているし、そんなこと君も分かっているだろう。それでも質問すると言うことは、『ウソついてもばれないですよね』という意味で聞いているんだろうが、そんなこと知るか。バレルかバレないかは、君の表現力と相手の眼力のどちらが勝るかなのだから」

※ウソをつくのならば勝負をする覚悟が問われる。




第21節  根拠薄弱なプライドをもっている者には怒るべきなのだ


194 周囲のせいにしたって状況が好転するのか

「オレはこんなところでこんなことをしているべき人間じゃない。もっと大きなことをやるべき人間なんだ。こんな下らないことをオレにやらせている周囲の奴らがバカなんだ」
「そんなプライドをもつ根拠は何だ。それが本当はないから、今こんなことしているんだろ。周囲のせいにするな。根拠薄弱なプライドをもつな」

※おそらくこういうタイプの人間は、「いつか今に見てろよ」という気持ちを強く持って、それを実際の努力につなげることができないのだろう。努力できないのに現状には不満を持つ。この手の人間には分不相応という言葉の意味を教えて、むしろ楽にさせてやるべきだ。


195 上手く助けられるのも能力の内

「いいえ自分でやります。自分でできます。やって見せます。」
「その心意気は良い。だがな、それは何でも自分でできるという傲慢さ、自己の能力への過信とも言えるんだ。自分の実力を謙虚に受け止め、助けられるべきところ見極めて、素直に助けてもらう。それも実力の内だ。」

※処世術に長けた人は、上司の気分を良くするため、わざと助力を頼んだりする。それを思えば、助けを求めることができない不器用さは、スグに人に頼る依存症と同じく、人間関係を上手く構築できない。


196 助力を断られたからって自分に傷はつかない

「アイツは私が手を差し伸べたのに、助けを断ってきた。私なら助けられるのに、何もそこまで嫌わなくてもいいだろう」
「こちらからの助けを断られたのは恥ずかしい思いなのかもしれないが、相手を非難するな。そこで非難したら相手と同じレベルと見なされる。『残念だ』くらいにとどめて置け」

※相手の下らないプライドの高さに飲み込まれしまっては、自分にも下らないプライドが芽生えてしまう。


197 どんな愚か者でも見下されるのはイヤなんだよ

「近頃の若い連中は精神的に打たれ弱い。この前もちょっと注意しただけでスグに会社を休むヤツがいた。困った連中だ」
「それ、本当に『ちょっと注意しただけ』なのか。その若者がそうやってある種の抗議をしてきたということは、君が見下すような叱り方をしたからではないのか。若者は未熟なのは当然なのだから、それをバカにせず、受け入れるだけの度量を持てよ」

※日本人だからだとか、今の若者だからだとか、そういうこととは無関係に、人間はある条件が整えばだいたい精神的に打たれ弱い。そして、他人の打たれ弱さを見てイライラしてしまう不寛容さもだいたいの人間はもっている。それらを他者には認めようとし、自分は打たれ強さと寛容さを求め続ける。それが生きるという営みの意味か。


198 バカにされたと感じたらお終い

「あなたとは議論しない」
「では無視するのか。そうして私をバカにして優越感に浸っていくのか。私を相手に感じる優越感なんて安っぽいよな。見下しているのなら、そんな相手に言葉できちんと説明してみよ」

※自分の身を自分で貶めることができれば、「冷静に怒る」ことができる。『自分はバカにされた』というプライドや見栄が、「荒ぶる感情として怒り」に火をつけてしまう。しかも、その火はたいてい、自分をも焦がしてしまう。


199 自慢しているつもりはないかもしれない

「私は夜食事に行くときに、学生のアルバイト店員がいるような店に入ったことがないんだ」
「それでカッコつけているつもりなら勘違いだ。安っぽい自慢にしか聞こえない。そういう人を不愉快にする言葉には気をつけろ」

※この手のことを言う人は、こういう言葉が他人を不愉快にするとは気付いていない。案外、無邪気に事実を言っているだけで自慢ではないという認識でいることもある。


200 男がよく言う本当に下らない自慢

(テレビ中継を見ながら)「このボクサー、大したことないよ。もしオレがリングに上がってコイツと対戦したら、ボッコボコにしてやれるぜ」
「証明のできない妄想を事実のように語るな。自分のプライドを架空の世界で満たそうとするのは恥ずかしいことだ」

※ありえない状況を想定して、ありえない結果を自慢し、自分の力を誇示しようとする人がいる。その時、その力こそが、現実にありえない。


201 何でも自分の話にもっていっちゃう人

「先週、旅行で東南アジアへ行ってきたんだ。結構珍しいと思うけど、ラオスに行ってきたんだよ」
「あ、私も行ったことがある。私が行ったのは4月で、ラオスではその頃が正月なのよね。だから、すごく街がにぎやかでさ。それで、その時おもしろいこととがあったんだけど」
「ちょっと待って。あなたはコミュニケーション能力が高い人だと思う。だったら、まずは人の話を聞く余裕を見せてくれないか」

※人の話題をスグに自分の話題へとすりかえる人がいる。プライドが誤った形で肥大してしまったということか。この手のタイプには伝えるべきである。コミュニケーション能力とは話す力の前に「聴く力」なのだと。・ プライド


202 それはただのジェラシー

「この前さ、3つ上の先輩で、あの超有名コンサル会社のA社で働いている人がいてさ、その人をウチの就活サークルに招いて、社会人になるための心構えとか、就職活動のことを語ってもらったんだ。その人は就活で一流企業を何社も落ちたけど最後にA社にどうやって採用されたかみたいな話をしてたけど、それってただの自慢話じゃんと思って聞いてたんだ」
「君こそ、それってただ羨ましく思っているだけじゃないか。相手の体験を自慢と感じるのは自分の羨望の表れ。卑しい根性だ。招かれて話をしただけなのに、そう受け取られてその先輩こそ気の毒だ。何でも勘でも人を貶めようとするな」

※成功した人の体験談をすべて自慢話に受け取る人間がいる。そう受け取ることでしか心のバランスを保てないのは不幸なこと。だから、そういう人間には、人の話をポジティブに解釈することを教えるべきだ。


203 それはただ自慢したいだけ

「先生、次の面接演習で、オレ、アドバイザーとして助っ人に行きますよ。もちろん、お金は要りません。オレの就活体験は後輩の役に立つと思うんで呼んでください」
「それは後輩のためと言うより、自分が偉ぶりたいだけだろう。自尊心を満たしたいがためのアマチュアの助言は返って迷惑だ」

※居酒屋やバーで日本酒やワインの薀蓄を並べる人間はまだマシな方だろう。観光ボランティアも頼んでもいないのに教えたがりで困るが、これもまだ罪は浅い。就職活動や受験、あるいは健康・医療系の分野で、体験をした人がボランティアで語りたがるのは、当人が抱くただの教えたがりの気持ちを満たすため。それは助言を受けた人の人生や生命を危険にさらす可能性もあるので、罪深い。


204 それは君の問題であって私の問題ではない

「そんなバカにしたようなものの言い方をしないでくれ」
「私は誓って君をバカにしていない。そう感じられたのなら、それは私の表現の問題ではなく、君の心の問題だ」

※被害妄想は人間関係における冤罪を生む。それは、自分が抱えている問題や、そこから生まれる心の問題を、他人に転嫁していることを意味する。そういう相手には一度怒った後、その人の抱えている問題を現実的に解決する方法をともに考えてやらねばなるまい。



第22節  そして、やはり人は怒るべきなのだ


205 お金を受け取ることは悪いことなのか

「ここの法律相談はお金を取るんですね。前に伺った所は無料でやってくれてたけどなぁ」
「有料で行うということは無料で行うよりも責任が重いのです。責任が重いとは私はあなたと運命共同体だということです。料金をいただいたのに、もし、あなたの不利益になるようなことを言えば、私の評判は下がって職を失いますから。有料で行うということはお金を払う側も受け取る側も、より真剣に取り組むということです」

※お金を受け取って何かをやるのは悪いこと、ボランティアでやるのは良いこと、と見なす風潮は根強い。だが、何かをお金も取らずに提供するということは、提供する側が次に何かを売りつけるための布石か、自尊心を満たすためか、そのどちらかであることが多い。もちろん、有料のものと同じだけの効果を持っているのなら問題ないが。


206 日本のお金持ちが世の中を良くしてくれない理由

「そうやって、お客さんの幸せよりお金儲けのことばかり考えているんでしょう」
「その二つに区別があるのか。第一、お金儲けのことを悪く言うな。お金儲けは価値の正当な交換だ。お金のことを否定するようなことを君や皆が言うから、お金持ちが世の中を善くする文化が育たないんだ」

※公務員を志望する若者の志望理由の第一が、安定。第二がこのお金を忌避する感覚で、「いくら儲かったかといった利益にうるさい民間企業に就職したくない」というもの。残念ながら、お金が流れる本当の仕組みも、儲かる本当の喜びも、そしてお金の本当の怖さも、何も知らない・知ろうとしない人間は多い。


207 真実を述べる者は嫌われる

「アイツ、何も分かってないんですよ。アイツにズバッと真実を突きつけてやりましょうよ」
「正しいことを正しいまま言うことが正しいことなのだなんて甘い考えを持つな。正しいことをストレートに言えば、正しいだけに相手は傷つく。本当のことを言われてショックを受けた人間は、それがどんなに正しい内容でも一生君のことを恨むようになるよ。そうなれば君にどんな不利益が生じるか想像してみたまえ」

※正しいことほど、モノは言い様。


208 恩を受けた者が言うことか

「恩着せがましく言うなよ」
「私が怒っているのは私に恩を返さないからではない。君は私に恩を受けて起きながら、それを次の世代に授けることをしないから怒っているのだ」

※恩義は順送り。親に受けた恩は子に、上司に受けた恩は部下に、そうやって次の世代へと返していく。そう思えない人は、性格的な問題と言うよりは、そういう大恩を受けた経験がないのだろう。それはそれで哀しいことだ。


209 地元志向の良し悪し

「自分はこの地元で働いて家庭を築いて、一生ここで暮らせればいい」
「オマエは何て覇気もなく、視野の狭い人間なんだ」
「それは違う。確かに私の視線は地元に注がれているが、その光景を見ながら世界で起こっている様々な問題やここまでの歴史の歩みを、いつも心にかけている。そして、ここから何か発信できないかと考えている。覇気がないわけでも視野が狭いわけでもない。世界を見て、そのうえでこの地元が好きだから、ここにいるんだ」

※残念ながら一方で、外の世界に出ることへの恐れや面倒くささから地元志向になっている人間もいる。両者の分岐は、今見えているものから見えていないものの真実を見通せるかどうかから生じるのであろう。それはそのまま視野の広さ狭さに当たる


210 人を育てるということは面倒を引き受けるということ

「ちょっとこれ、上手くできないんですよ。代わりにやってくれませんか」
「ああ、助けてはやるさ。だが、『代わりに』じゃなく、『一緒に』だ。助ける私の負担も考えろ。たとえるなら、私は君をオンブしてもいいが、君が自分の力で私の肩につかまってくれなければ、君を支えるために私は身を屈めて、それで腰に負担がかかってしまうんだ。それを忘れるな」

※子育てでも人材育成でも同じ。何かの後始末を未熟な者の代わりにやってあげることは簡単だ。が、その未熟者に考えさせ、教え、また考えさせ、そして実行させる、この面倒なプロセスを育てる側が放棄してはならない。


211 売りたがる友人

「と、まぁ今説明した通り、この洗剤って本当にすごいんだ。欲しくなっただろう。さらに、入会登録すればこの商品をあなた自身が受ける権利が発生して、あなたに利益が還元されるんだ。どうだ、入会しないか」
「君が売りたいものを私に売りつけるな。他の人を通じて私が洗剤を買ったり入会したら困るくせに。私の『買いたい』より、君の『売りたい』の方が強すぎるんだよ」

※「自分が売りたいものを売らない」は商売の基本。


212 好きも嫌いも結局は執着

「アイツにあんな断られ方をして私は悔しいんだ。仕返ししてやる。もう二度とこの当たりで仕事ができないようにしてやる」
「そんな不健全なことはやめろ。仕返ししようとしたら、嫌いなアイツのことを四六時中考えないといけないじゃないか。それに仕返して何か利益が君にあるのか。君の気持ちを収めるためだけに、何の得もないどころか、さらに反撃を食らう危険を冒すような真似はやめろ」

※人の心は状況次第でスグに変わる。相手への恨みがむしろ感謝に変わったり、相手の冷淡な態度がいきなり誼を求めてくるものに変化したり。ポジティブな活動が、そのようなプラス感情を呼び起こす状況を作り上げる。もう一度言う。人の心は状況次第でスグに変わる。自分の心にも、相手の心にも、変化が起こりうることは常に覚えておきたい。


213 正解は常に暫定的

「そんなふうにアドバイスを求められても、営業にこれって正解はないし、自分なりのやり方というものしかないよ」
「この世界では私の先輩でしょう。逃げないでください。確かに、根拠薄弱なのに言い切ってしまう威勢が良いだけの正解は要りません。しかし、『正解はない』と言われて放っぽり出されたら、一歩も前に進めなくなります。正解は修正するためにあるのですから、アドバイスをください」

※軽薄な助言者は、思い込みで根拠薄弱な正解を言う。訳知り顔をする助言者は、正解はない、各々の正解があるだけと言う。真の助言者は、入念に調べ上げた根拠をもって正解を示し、それが間違いだった場合の修正にも参加する。人が胸に抱く正解は常に「暫定的」なのだ。


214 運の良し悪しを決めるもの

「私は本当についていない。いくら能力があっても努力していても、やっぱり運の良し悪しで全て決まってしまうのね」
「あのさぁ、運というのは人によってもたらされるんだよ。運がないのは人脈に恵まれていない証拠。人脈に恵まれていないのは君の人徳がないからだ。謙虚になれ」

※運はこのように結果を出せなかった者の言い訳となる。一方で、運は不条理によって結果を得られなかった者への慰めともなる。


215 CM『進路に悩んだら読む 16歳からの「孫子」』絶賛発売中!

「やりたいことがみつからないんだよ」
「そんなことを考えるヒマがあったら、できること、できそうなことをリストアップしろ」

※できることは、やりたいことになる。私の前著『16歳からの「孫子」』(彩流社)も参照。


216 逆ギレでもいいのだ

「おい、逆ギレするのか」
「逆ギレとは不条理に怒ることだ。私の怒りは条理に基づく真っ当な怒りだ」

※大いに怒ろうぞ。理は我にあり。


217 やはり人は怒るべきなのだ

「怒るのはよくない。怒りは人と人を引き離す感情だ」
「いや、怒りは最も人間的で自然な感情であり、相手に最も力強く影響を与える感情だ。ただ、劇薬だから使い方を誤るなという事なのだ。怒りを否定するな。怒って離れていく人というのは、それは端から自分とは縁がない、遅かれ早かれ人間関係が切れる人なのだ」

※「怒る」や「叱る」というこの基本単語をどう定義するかにもよるが、「怒る」「叱る」ことで、相手を覚醒させたり、より関係が緊密になったりすることも多々ある。ただ、怒りは上手く相手にぶつけ、さっさと収めるのが良ろしかろう。いつまでも続く怒りは、恨みとなる。恨みは相手のみならず自分の身をも滅ぼす不健全な怒りだ。




【 あとがき 】


 私は仕事柄、多くの高校生・大学生・20代の社会人と接している。正直なところ、無礼な態度、不快な言動をとる若者は多い。

 しかし一方で気付かされるのは、彼・彼女らはきちんとこちらが怒ってやると、素直に言動を改めることも多いということ。

 やはり、怒ることは大切なのだ。

 だが、なかなかできない。なぜか。やる気・勇気の問題もあるが、根本的には、怒りはこちらに跳ね返ってくるからだ。

 いや、何も反撃を食らうという意味ではない。怒るというのは怒る相手を正すという意味が含まれるが、同時に怒った本人自身に、「お前に他人を正すだけの資格があるのか」という問いを突きつけてくるということだ。だから、人はなかなか怒れない。「人に書類を見せる前に、書類にミスがないかきちんと確認しろ」と、怒った本人が書類のチェックを怠ってミスを見落とすといった類の話はよくあることだ。

 相手への怒りは自分に跳ね返る。しかし、これは肯定的に捉えてよい。怒ることで相手を正すだけでなく、自分自身のこれからを正すことになる。

 その意味で怒ることは大切だ。怒るのは人のためばかりでない。もちろん、自分の悪しき心の欲望を満たすためでもない。怒りは自分を律するためにもあるべきなのだ。


(了)

Logically Barking 〔Like A Philosopher〕(Op.13)

by AEBASATOL(2014)

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饗庭 悟 : AEBASATOL

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